高齢になると、病気や転倒による骨折などで長期の入院を強いられる可能性が高くなります。
入院をしてベッドで過ごす時間が長くなると、高齢者はあっと言う間に筋力が衰えるため、日頃から足腰を鍛えておくことが重要となります。
老人ホームでリハビリはできるのか。
ここでは、老人ホームで受けられるリハビリについて徹底解説していきます。
歳をとっても、できるだけ自立した生活を続けるために、どのような老人ホームを選択するのが良いのか、参考にしてくださいね。
老人ホームで受けられるリハビリとは
リハビリを受けることができる施設は以下の3つになります。
施設 | 介護度 | 年齢 | 主なリハビリの担当者 | 入居期間 |
老人保健施設 | 要介護1以上 | 65歳以上 | 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 |
3ヶ月 |
介護医療院 (介護療養型医療施設) |
要介護1以上で日常生活を送る中で高度な医療ケアを必要とする場合 | 65歳以上 | 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 |
終身 |
介護付き有料老人ホーム | 要介護1以上 | 65歳以上 | 介護職員 | 終身 |
老人保健施設
老人保健施設は、病気や怪我などで入院した方が「退院が決まったけれど、不安なのでもう少しリハビリをして帰りたい」と望んで入所することが多いです。
在宅での生活、または入居していた老人ホームへ帰ることを目的としているため、入所期間は基本的に3ヶ月と短めです。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院は、日常生活を送る中で、高度な医療ケアを必要とする方が入所する施設であり、老人保健施設同様、手厚いリハビリを受けることができます。
介護療養型医療施設の2024年3月末の廃止に伴い、介護医療院が新設されました。
介護医療院と介護療養型医療施設には、4人部屋を家具やパーティションで仕切っている多床室があります。
介護医療院は「生活施設」としての機能を重視しているため、病院基準の1人あたりの面積が6.4㎡以上であったものから8.0㎡以上と広くなっています。
有料老人ホーム
有料老人ホームでは、施設基準として理学療法士などの配置は決められていません。
そのため、施設によっては専門のリハビリ担当者がいない場合もあります。
リハビリに重点をおくことを強みとして、リハビリ担当者を配置している施設では、以下が一般的です。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 柔道整復師
- 按摩マッサージ指圧師
このような専門のスタッフがいなくても、有料老人ホームでは介護職員が行うことのできる「生活リハビリ」があります。
入浴の介助をしている介護職員が、片麻痺のある入居者に対して、自身で洗えるところの声かけや、転倒をしないようサポートをすることが生活リハビリとなります。
また、トイレでの介助であれば、ズボンの上げ下げなど自身で行なえるところ、介護職員が介助すべきところを個々の運動能力に応じてサポートします。
「介護職員に手伝ってもらう方が早くて楽だ」と思われがちですが、必要のないところまで介助してしまうと、今ある運動機能まで失われてしまう可能性が出てきます。
そのため、日常生活でのさまざまな場面において、自身でできることを見つけ、その際には危険がないようにサポートしてもらうなど、日々の積み重ねが、健康寿命を延ばす秘訣と言えるでしょう。
出典:厚生労働省 リハビリ・軽度者(予防給付)について
リハビリの費用は?
リハビリの費用は、老人保健施設または介護付有料老人ホームの場合、「介護保険」が適用されます。
介護保険の自己負担額は、所得により1〜3割となります。
令和2年の「介護老人保健施設の介護報酬」で計算すると、1日あたり2500円程度です。
- 短期集中的なリハビリテーションの実施(240単位/日)
- 認知症短期集中的なリハビリテーションの実施(240単位/日)
※週に3回を限度
1単位の単価は基本10円となりますが、 これに地域や加算されるサービス内容などによって加算額は異なります。
理学療法士によるリハビリのメリット
理学療法士は「PT(Physical Therapist)」と呼ばれ、病気やケガにより生じた障害や運動能力の低下を改善するよう指導やサポートをします。
「起き上がる」「立ち上がる」「歩く」といった基本動作の回復に向けた物理的なリハビリです。
回復期のリハビリでは、「在宅復帰」と「社会参加」を目標に、身体機能の向上や福祉用具の提案など、生活環境の調整も行います。
作業療法士によるリハビリのメリット
作業療法士は「OT(Occupational Therapist)」と呼ばれ、身体的、精神的に障害のある人が、自立した生活に向けて、作業活動によって体の諸機能の回復と維持を図ります。
道具を使った手先の訓練と、「着替え」「入浴」「料理」といった日常生活の訓練のほか、趣味活動と合わせてのリハビリも行います。
たとえば、折り紙を折る、皿の中の小豆を箸で1つずつ掴んで別のお皿に運ぶなど、理学療法の応用といえます。
また、認知症のリハビリも専門としているため、認知症の方への正しい対応の仕方、環境づくりや認知機能訓練なども行います。
言語聴覚士によるリハビリのメリット
言語聴覚士は「ST(Speech-Language-Hearing Therapist)」と呼ばれ、脳の損傷によって起こる、話すことや聴くこと、また嚥下障害など、以下の障害の改善を図ります。
失語症 | 読み書きができなくなる |
高次脳機能障害 | 記憶力や注意力等が低下する |
構音障害 | 唇や舌の麻痺により滑らかに話せなくなる |
嚥下障害 | 飲食物をうまく飲み込めない |
たとえば、「失語症」であれば発声方法の指導や、苦手な音を組み合わせた単語を一緒に読むといった訓練です。
「嚥下障害」の場合は、個々の状態に合った食事形態や方法の提案も行います。
リハビリは積極的に受けた方が良い?
「この歳で、今さらリハビリなんて。辛いことはしたくない」
このように、リハビリを辛くて大変な事だと思っていませんか。
辛いイメージのあるリハビリですが、老人ホームで行われるリハビリは、そのようなものではありません。
一般的に、理学療法士などの専門職と、一対一の個別でのリハビリを行えるのは、1回20分×週1〜2回程度の施設が平均的です。
そのため、通常は介護職員による「生活リハビリ」が主になります。
また、施設の中で役割をもつことが意欲の向上に繋がるため、あえて食堂のテーブル拭きや、食事用のエプロンを畳むことをお願いするということもあります。
いつもより少し努力する。この積み重ねが現状の機能を維持することにつながるのです。
出典:厚生労働省 平成29年介護老人保健施設 (参考資料)
まとめ
老人ホームでのリハビリには、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職によるもの、介護職員が日常生活をサポートしながら行う「生活リハビリ」があります。
高齢になると、少し動いても疲れがでたり、迷惑を掛けてしまわないかと気にしたりして、「何もしない事が一番である」と思うかもしれません。
しかし、身体を動かさない状況が続くと、心身の様々な機能が低下するリスクが高まります。
この記事を読んで、リハビリに対する「辛いイメージ」を少しでも減らし、リハビリについて前向きになって頂けるとうれしいです。