老人ホームの費用が払えない!困った時の対処法を徹底解説

「収入が減って、親への援助ができなくなった」
「介護度の進行により支払う費用が増えてしまった。どうしよう」

人生は予定通りにはいかないものです。

でも大丈夫!老人ホームの費用を支払うことができない事態におちいっても、あわてる必要はありません。

ここでは、老人ホームの費用が払えなくなった時の対処法から、費用を安くおさえる方法や失敗しない考え方まで徹底解説していきます。

いま困っている方はもちろんのこと、これから老人ホームを検討しようと考えている方にも役立つ情報です。

いざという時に困らないよう、ご参考いただければ幸いです。

老人ホーム入居中に費用が払えない。そんな時にはどうしたらいい?

老人ホームの費用が払えないとわかったら、すぐに施設の生活相談員や担当のケアマネージャーに相談しましょう。

たいていの施設は入居費用が払えなくても、1~2カ月の猶予期間をもうけています。

入居時に交わした、「契約書」や「重要事項説明書」に支払いが難しくなった場合の猶予期間について記載があるので確認しておきましょう。

「どうしよう」と、ひとりで悩んでいる間も猶予期間は過ぎていきます。

本人が支払えなくなった場合、身元引受人(連帯保証人)に連絡がいき、代わりに支払いをお願いすることになります。

しかし、身元引受人も支払いが困難で、猶予期間を過ぎてしまった場合、強制退去の可能性もあります。

早めに相談することで、周囲も余裕をもって対応できるため、負担をかけることも少なくなりますよ。

さまざまな制度や対処法があるので、正直にありのままを伝えることも大切です。

「黙っている」ことが、一番やってはいけないことなのです。

なぜ支払いが滞る?その状況に陥る原因とは

そもそも支払いが滞る原因には何があるのでしょうか?

老人ホームには「公的施設」と「民間施設」があります。

民間施設の月額利用料は、一般的に15〜40万円かかります。

対して、公的施設の月額利用料は5〜15万円と安価なため人気が高く、入居の待機期間が数年におよぶこともあります。

民間施設を選んだ場合、国民年金の収入のみで毎月の利用料を払うことはできません。

また、厚生年金の収入がある方でも、選んだ施設によっては年金以外の収入が必要になるでしょう。

年金以外の収入には、たとえば何があるでしょうか?

  • アパートなどの不動産収入
  • 投資信託や株式投資などの配当金
  • 家族からの援助

これらの収入は、景気などの環境による影響を受けやすいため、想定外のことがあるかもしれません。

また、親の家を売却して老人ホームの入居費用にあてようと考えていたのに、思うように買い手がつかないこともあるでしょう。

このような想定外のことが起こった場合、どのように対処することが必要なのでしょうか?

払えなくなってしまった場合の対処法5つ

支払いができなくても、すぐに退去を言い渡されることはありません。

そのため、この猶予期間にどのように行動するのかがポイントです。

これから紹介する5つの対処法を知ることで、老人ホームの費用を支払えなくなってしまっても、落ち着いて対処することができますよ。

対処法1:すみやかに現状を伝え相談する

まずは、施設の職員に現状を伝えましょう。

施設の生活相談員や施設長、ケアマネージャーと今後について相談してください。

その際、適切な判断をしてもらえるように、正直にありのままを伝えることが重要なポイントです。

対処法2:減免・助成制度を利用する

所得が少ない方の場合、介護費用が安くなったり、お金が返ってきたりと、さまざまな制度があります。

条件が揃えば以下の制度をうけることができるかもしれません。

  • 介護保険料の減免制度
  • 高額介護サービス費
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 特定入所者介護サービス費

対処法3:住宅に関する制度を利用する

自宅に誰も住んでいないが、家は売りたくない方には、自宅を担保にして融資をうけるという方法もあります。

以下の制度を使えるか検討してみるのもいいでしょう。

  • リバースモーゲージ
  • 不動産担保型生活資金
  • マイホーム借り上げ制度

対処法4:料金が安い施設に転居する

入居一時金を支払っている場合、退去時に費用の一部が戻ってくる場合があります。

その費用を転居先の老人ホームの費用にあてることを検討してみましょう。

ただし、老人ホームも賃貸住宅の退去時のように、現状回復を求められることもあります。

一般的には、ふつうに使用していて劣化していく経年劣化については問題ありません。

契約の時に、退去時はクロスの張り替えやハウスクリーニングなどが必要なのか確認しておきましょう。

また、もとからある傷などがないか、入居の時に施設の職員に立ち会ってもらうことでトラブルを回避できます。

疑問を感じる請求をされた場合には、地域の消費生活センターに相談しましょう。

対処法5:生活保護を受ける

厚生労働省が出している「生活保護制度の被保護者調査 年次調査」によると、平成29年時点で65歳以上の生活保護受給者は全体の49.1%でした。

下の表を見ても、年金受給額が10万円以下の受給者の割合は男性は2割〜4割を超えており、女性は5割〜7割を超えています。

生活保護受給者でも入居可能な老人ホームもあるので、生活保護の申請も選択肢のひとつにしましょう。

引用元:厚生労働省 公的年金受給者に関する分析

ここでは対処法を5つ、簡単に紹介してきましたが、つぎに詳しく解説していきます。

自己負担を抑えられる軽減・助成制度の利用

介護保険料の減免や助成制度を利用することで自己負担額を抑えることができれば、これまで通りの生活を続けられるかもしれません。

対処法2のそれぞれの制度について、詳しく解説していきます。

①介護保険料の減免制度

介護保険制度とは、介護が必要な人を社会全体で支える仕組みのことです。

これは、40歳以上の国民から徴収した保険料と、国や都道府県、市区町村の税金でまかなわれています。

納める金額や対象者の条件は、居住している市町村または特別区により決められています。

介護保険を利用する場合は、所得に応じて1〜3割の費用を負担しますが、条件が揃えば減免も可能です。

住民登録が同一世帯の主たる生計維持者が死亡・失業等に伴う著しい収入減や震災・火災・風水害等により大きな損害を受けた場合に介護保険料の減免申請を行なえます。

減免の申請に際しては、「収入の著しい減少を証明する書類」や、「罹災証明書」等の提出が必要になります。

②高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、1カ月に払った利用者負担の合計が「負担限度額」(※参考2)を超えた時に超えた分が払い戻される制度です。

介護保険は、必要な介護の重さによって、要支援1〜要介護5に分けられています。

この介護度に応じた「区分支給限度額」(※参考1)が決められており、限度額を超えたサービスについての支払いは対象になりません。

そのため、区分支給限度額を超えたサービス利用は、全額自己負担となります。

 

(※参考1)区分支給限度額

引用元:目黒区役所 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額)

 

どのサービスをうけるか、限度額を超えないように、ケアマネージャーとしっかり話しあうことが重要です。

しかし、要介護2以上になると必要なサービスが増えるため、限度額を超えるケースが多くなっていることが課題となっています。

また、食費・居住費・日常生活費については介護保険の対象外のため、全額自己負担になります。

 

(※参考2)利用者負担限度額

引用元:厚生労働省 令和3年8月利用分から 高額介護サービス費の 負担限度額が見直され

つまり、区分支給限度額内で介護サービスを受けた場合、参考2の所得区分に応じた負担上限額が、1カ月に必要な介護費(※食費・居住費・日常生活費を除く)となります。

この高額介護サービス費は、負担上限額を超えた時に市区町村から申請書が送られてくるため、「知らなくて損をした」ということがありません。

送られてきた市区町村の窓口に提出し、受理されると高額介護サービス費を受けることができるので、早めに申請しましょう。

申請の時効は2年以内です。自己申告制なので、申請もれがないように気をつけましょう。

③高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担の合算額が高額な場合に、自己負担を軽減する制度です。

医療保険上の世帯単位で、医療保険と介護保険の自己負担合算額が、各所得区分に設定された限度額を超えた場合に、当該合算額から限度額を超えた額が支給されます。

介護保険に係る部分は「高額医療合算介護サービス費」として支給され、医療保険に係る部分は「高額介護合算療養費」として支給されます。

世帯内の後期高齢者医療制度の被保険者全員を合算した額が対象になります。

引用元:厚生労働省 高額介護合算療養費制度

④特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費とは、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」及び「介護医療院」に入所(短期入所も含む)した場合の食費・居住費についての自己負担を軽減する制度です。

年金収入の少ない人は「介護保険負担限度額認定証」を市区町村の窓口で申請してみましょう。

居住費と食費の負担軽減をしてくれる「介護保険負担限度額認定証」は1〜3段階に分かれており、交付してもらうには以下の4つの条件が必要です。

また、別世帯であっても配偶者が住民税非課税であることも条件なので、注意が必要です。

第1段階 生活保護世帯
第2段階 住民税非課税世帯 年金収入80万円以下 
第3段階① 住民税非課税世帯 年金収入が80万円~120万円以下
第3段階② 住民税非課税世帯 年金収入が120万円以上 

 

 

さらに、預貯金(預貯金、有価証券、金・銀、投資信託、現金)についても下記の要件を満たさなければなりません。

単身 夫婦
第2段階  650万円まで 1650万円まで
第3段階① 550万円まで 1550万円まで
第3段階② 500万円まで 1500万円まで

 

また、「特別養護老人ホーム」に限りますが、介護費も含めた居住費・食費の全てについて、半額分が医療費控除の対象となります。

領収書が残っていれば、過去5年までさかのぼって還付請求することもできますよ。

【もしものための予防にも】必要資金を作るために必要なことは

これまで費用負担の軽減制度について解説してきましたが、安心して暮らしていくには「蓄える」ことも大切ですね。

「必要な資金を作る」ためには何をしたらよいのでしょうか?

対処法3の住宅に関する制度について解説していきます。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、自宅のある高齢者が、老後の生活資金として自宅を担保にして金融機関から融資をうけるローンです。

生前は利息返済のみでよく、元本の支払いは、なくなったあとで自宅を売却するなどして、相続人が一括返済するしくみになっています。

しかし、これにはリスクもあります。

余命がわからないため、長生きすることで融資額が足らなくなる長生きリスク。

また、不動産価値の下落による融資額の見直しや、金利が上昇するリスクもあるので、注意が必要です。

生活福祉資金(不動産担保型生活資金)

生活福祉資金とは、都道府県社会福祉協議会を実施主体とする、65歳以上の高齢の低所得者を対象にした貸付制度です。

不動産を担保として生活資金の貸付けを行うことにより、その世帯の自立を支援することを目的としています。

つまり、生活保護受給の予備軍に対して、自立を支援することがねらいです。

  • 貸付限度額は、居住用不動産(土地)の評価額の70%程度
  • 貸付額は、1ヶ月当たり30万円以内で、3ヶ月ごとに貸付
  • 貸付けの申込みは、市町村社会福祉協議会で受付

マイホーム借り上げ制度

一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が行う事業で、運営には国の基金が設定されています。

50歳以上の方が所有する住宅を借上げ、子育て世帯等に転貸する制度で、空室が発生した場合も一定の賃料収入が保証されます。

そのため、自宅を売却することなく、住みかえや老後の資金として活用することができます。

しかし、1人目が入居するまで賃料収入は入ってこないため、注意が必要です。

1人目の入居が決まった後であれば、その後は空き家になっても安定した賃料収入を得ることができます。

払えなくならないための施設選びのポイント3つ

対処法4の「料金が安い施設に転居する」ことは、施設費用を払えなくなるリスクを回避するために重要です。

まずは、これまで解説してきた制度を利用したうえで、自己資金がどれだけあるかを把握しましょう。

これから、払えなくならないための施設選びの3つのポイントを解説していきます。

ポイント1:アクセスの良くない施設を選ぶ

面会に来る家族のために、アクセスの良い老人ホームに入りたいと考える人は多いですよね。

しかし、立地の良い施設は居住費が高くなってしまいます。

家族には不便な思いをさせてしまうかもしれませんが、あえてアクセスの良くない施設を選ぶことで費用をおさえることができます。

また、郊外を選ぶことで緑に囲まれた自然豊かな暮らしができるかもしれません。

ポイント2:建物が古い施設を選ぶ

きれいでおしゃれな施設は人気です。

しかし、築年数の浅い施設も居住費が高くなってしまいます。

費用をおさえたい場合、ここは目をつぶらざるをえません。

また、こういった古い施設は導線が悪い施設もあります。

たとえばトイレやお風呂場が遠いといったことです。

このような施設でも、スタッフの対応がよい施設では工夫が見られます。

見学に行かれた際は、建物のきれいさばかりに目をとらわれがちですが、スタッフの対応にもポイントをおいてみましょう。

ポイント3:地方の施設を選ぶ

家族が通いやすいようにと、できるだけ子どもの家の近くの施設を探す人も少なくありません。

しかし、都心の施設は高いうえに、入居の待機日数も長くなりがちです。

すぐに通える距離でなくてもよければ、地方の施設も選択肢のひとつに入れましょう。

どこも入居待ちで入れないとあきらめていたのに、地方で探したらすぐに入居できたということもありますよ。

月々の費用を抑えるためには

さまざまな制度をお伝えしてきましたが、月々の費用をおさえる方法はほかにもあります。

支払い方法で入居一時金がありますが、まとまった資金があるなら、あえて初期費用を払うことで月々の費用を安くすることもできます。

料金プランを比較して、自分に合った支払い方法を検討しましょう。

また、介護サービス費を安くする方法として、家族に協力してもらうこともポイントです。

たとえば、買い物や洗濯など、面会に来てもらったときにお願いするといいですよ。

ライフプランをしっかりと考えることが大切

老人ホームに入居後、費用が払えなくなることは、だれにでも起こりえることです。

そのため、日ごろからもしもに備えたライフプランをしっかりと考えておくことが大切になります。

これまで解説してきた、さまざまな制度を知っておくこと。

また、困ったときにはケアマネージャーに早めに相談することも重要です。

「介護破産」ということばがあるほど、介護というのは終わりが見えないため、まちがったレールの上を歩いてしまうと大変な事態におちいってしまいます。

ひとりで悩んでかかえ込まないことが、なにより大切です。

他の施設への転居も難しい場合は、訪問介護の検討もあり

さまざまな制度を解説してきましたが、費用の安い老人ホームは人気が高いため、すぐに入居することが難しいかもしれません。

その場合、在宅での介護である「訪問介護」も視野に入れましょう。

介護保険で受けることができる在宅介護サービスは、以下の6つになります。

  1. 訪問型の介護サービス(訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリ、訪問診療など)
  2. 通所型の介護サービス(デイサービス、デイケアなど)
  3. 宿泊型の介護サービス(ショートステイなど)
  4. 訪問・通所・宿泊の融合型介護サービス
  5. 住宅環境を整えるサービス(福祉用具のレンタル、住宅リフォームなど)
  6. 介護保険適用外のサービス(実費対応による訪問介護やボランティア)

介護度によって使えるサービスに限りがあるため、家族の協力がどこまで得られるか、何が必要かをケアマネージャーと相談して、無理のないケアプランをつくりましょう。

  • ヘルパーに入ってもらいたい曜日と時間帯、必要な支援内容を決める。
  • 訪問看護師や訪問リハビリは必要なのか。
  • 訪問入浴では、寝たきりの状態でも看護師による入浴前の健康チェックと、持ち込みの専用の浴槽で入浴介助をしてくれるが、家族の立ち会いを求められることもある。
  • 訪問診療や訪問歯科による口腔内のケアなどは必要か。
  • 電動ベッドや車椅子、手すりなどの福祉用具のレンタルは必要か。

このほかにも、デイサービスやショートステイをうまく使うことで、介護者の休息時間をつくり負担軽減を図ることが重要です。

まとめ

「老人ホームの費用が払えない。どうしよう」

気持ちは焦るのに、だれにも相談しないというのが、一番やってはいけないことです。

今回は、6つの対処法について解説しました。

  • すみやかに現状を伝え相談する
  • 減免・助成制度を利用する
  • 住宅に関する制度を利用する
  • 料金が安い施設に転居する
  • 生活保護を受ける
  • 他の施設への転居も難しい場合は、訪問介護も検討する

さまざまな制度を活用して、自分に合った居場所を選択してください。

費用にばかり目がいってしまいがちですが、自分が心地よいと感じる居場所を見つけることは大切です。

施設を決めるときは、必ず見学に行って、できれば体験入所もしてみましょう。

また、入居がすぐには難しい場合は、訪問介護も検討することをおすすめします。

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