「老人ホームに入っても最期まで一緒に過ごしたい」
「老人ホームに一人で入居させるのは心配」
近年では、夫婦そろって老人ホームに入居することを希望する人が増えているようです。
しかし、夫婦部屋を備えている老人ホームは全体の半分程度。
そのうえ、個室が主流のため、夫婦部屋の戸数は多くありません。
夫婦で老人ホームに入居する場合、入居のタイミングは重要なポイントとなります。
この記事では、夫婦で老人ホームに入居したいと考えている方へ、費用や大事なポイントを徹底解説していきます。
大切な時を安心して過ごせる老人ホーム選びのために、参考にしていただけると幸いです。
夫婦入居できる老人ホームはある?
結論から言うと、夫婦で入居できる老人ホームはあります。
しかし、老人ホームは個室が主流になっているため、夫婦部屋を探す場合、選択肢は多くありません。
なかでも、公的施設では、比較的費用が安いことから「特別養護老人ホーム」の人気がありますが、「多床室」と呼ばれる4人〜6人部屋はあるものの、夫婦部屋はありません。
また、2002年より、国は特別養護老人ホームの新築・改築の際、個室タイプのユニット型にすることを推奨しています。
理由としては、入居者が自宅と似た居住環境で、なじみの人間関係をつくれることから、認知症のケアにも有効といわれているためです。
夫婦で入居することを条件に探す場合、夫婦部屋に限定せず、同じ施設内で別々の部屋に入居することも検討することで、選択肢を増やす事ができます。
夫婦入居の費用は?
夫婦で老人ホームに入居するパターンとして、夫婦部屋に入居する方法と、別々の部屋(個室)に入居する方法があります。
「費用がいくらかかるのか?」入居を検討する際、予算は一番気になる点ではないでしょうか。
一般的には、個室2部屋分よりも夫婦部屋の方が、家賃や管理費が安くなります。
ただし、夫婦部屋は部屋が広いというだけではなく、浴室が完備されていたりキッチンが広かったりと、設備が充実しているために、施設によっては費用面でほとんど差がない場合もあります。
また、一方に介護が必要ない場合、介護付きの施設に入居する事はできません。
そのため、介護が必要になると介護保険サービスを使った外部の介護サービスを受けることになります。
その場合、介護度によって下表のように「区分支給限度基準額」が決められており、介護度が進むと介護付きの施設に比べて費用も割高になってしまいます。
重度になっても24時間のサービスを受けることは難しいため、住み替えのリスクもあります。
出典:厚生労働省 公的介護保険制度の現状と今後の役割
夫婦入居のメリット・デメリット
年を重ねていく自分をイメージすることは意外と難しいものです。
これから解説するメリットとデメリットを知ったうえで、あなたに合った選択をしてくださいね。
夫婦部屋に入居するメリット
- 家族が傍にいることの安心感がある。
- 施設によっては、別々の部屋に入居するよりも費用が安い。
- 個室と比べて部屋が広く、施設によっては浴室が完備されていたり、キッチンが広かったりと、設備が充実している。
- 家族が面会に来る際の負担が少ない。
夫婦部屋に入居するデメリット
- ワンルーム仕様のため、一人の時間が作りにくい。
- スタッフに介護を頼めることも、相手を頼ってしまい、一方の介護負担が増える。
- 一方の介護度進行具合によっては、スタッフの訪問回数が増える可能性があり、生活リズムの不一致でストレスになる。
- 一方が亡くなると、施設によっては個室へ移動するよう促される場合があり、退居する際に、部屋の原状回復費用が必要になる。
- 一方が亡くなっても夫婦部屋に住み続ける場合、一人で費用を払うことになるため、負担が大きくなる。
このように、元気な時と介護が必要になった後では、生活リズムや体力の衰えにより、想定外の負担がかかることがあります。
夫婦で入居できる老人ホームを探すポイントは?
夫婦で老人ホームに入居する場合、以下の3つの条件によって入居の対象となる施設の種類が異なります。
それぞれの対象施設とチェックポイントについて確認しておきましょう。
また、事前の共通確認事項についても話し合っておくことが必要です。
【共通確認事項】
- 予算について(入居一時金、月額費用)
- 夫婦部屋 or 個室の希望
- 部屋の間取り(浴室、トイレ、キッチンなど)
- 介護の必要性
- 将来一人になった時のライフスタイル
①どちらも健康で介護の必要がない
【施設の種類】
- 健康型有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- ケアハウス
②一方だけに介護が必要
【施設の種類】
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- ケアハウス
【①②チェックポイント】
- 夫婦部屋の有無、あれば夫婦での入居が可能か
- 共有設備の充実(レストラン、フィットネスルーム、大浴場、娯楽室など)
- 介護サービス事業所の併設の有無
- 両方に介護が必要になった場合の退居の条件
- 退居時にかかる費用
- 一方が亡くなった場合の対応
※個室に転室する必要があるのか、転室する際に必要な費用はいくらか
こちらの記事では、老人ホームの入居条件や老人ホームの探し方のポイントについて解説しています。
→【徹底解説】老人ホームは何歳から入れる?
夫婦入居は早めに検討した方が良い
夫婦で老人ホームに入居する場合、早めに検討することをおすすめします。
厚生労働省の健康寿命に関する統計によると、令和元年では男性の健康寿命は72.68歳、女性は75.38歳。
平均寿命は男性が81.41歳、女性は87.45歳であることから、入居後のイメージをしてみましょう。
入居を検討してから見学に行き、実際に入居するまでの期間は、だいたい1〜2ヶ月です。
老人ホームを決めるまでには、まず3件程度候補を絞り、見学をして、気に入れば体験入居をしてみるというように、かなりの労力を要します。
実際に介護が必要になり、慌てて探すようでは、満足のいく老人ホームを見つけることは難しいです。
そのため、心身ともに健康である65歳〜70歳までの間に検討し始めることをおすすめします。
出典:厚生労働省 健康寿命の令和元年値について
老人ホームの見学の手順がわからない方は、こちらの記事を参考にしてください。
見学時のポイントも紹介しています。
→老人ホームの見学ポイントを徹底解説!
夫婦の意見を尊重して決めよう
これまで解説したメリットとデメリットを踏まえて、まずは夫婦で話し合い、老後に向けてのお互いの意見を尊重して決めることが大切です。
将来、介護が必要になった時のことまでを想定して考える。
「暗い話はしたくない」と避けてしまいがちですが、日ごろから老後に対するお互いの思いを伝えておくと、いざという時に慌てずベストな選択ができるでしょう。
まとめ
「最期まで一緒に過ごしたい」と考えているあなたへ、夫婦で老人ホームへ入居する際の費用とポイントについて解説しました。
- 夫婦部屋と個室にそれぞれ入居した場合の費用について
- 夫婦部屋に入居するメリット・デメリット
- 夫婦部屋を備えている施設の種類とチェックポイント
厚生労働省の健康寿命に関する統計によると、令和元年では健康寿命から平均寿命までの年数が男性は8. 73年、女性は12. 06年でした。
10年という年月を老人ホームで過ごすと考えると、短い期間とは言えません。
最期まで夫婦で穏やかな時間を過ごせるよう、二人に合った「終の棲家」を見つけてくださいね。