グループホームと有料老人ホームの違いは?

介護度が軽い人でも入所申込ができる施設の中に、「グループホーム」と「有料老人ホーム」の2種類があります。一見すると同じに思えるかもしれませんが、実は異なる点が多くあります。

 

こちらの記事では、様々な視点からグループホームと有料老人ホームの違いについてご紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。

グループホームと有料老人ホーム違い

グループホームと有料老人ホームの最も大きな違いは、「介護保険サービスとして認められているか」「介護保険サービスは別途契約する必要があるか」というところです。

 

グループホームは、介護保険制度に位置づけられている宿泊型の介護施設ですが、有料老人ホームは老人福祉法に規定された高齢者住宅の一種となります。ただし、指定を受けた一部の有料老人ホームは例外となっており、入所型の介護施設として機能しています。

 

まずは、グループホームと有料老人ホームの特徴や違いについて、詳しくご紹介していきます。

グループホームの特徴

グループホームの大きな特徴は、次の3つです。

 

  • 認知症の診断を受けている高齢者が対象である
  • 9人1ユニットで営まれる共同生活となる
  • 住み慣れた地域で暮らす事ができる

 

グループホームは、正式名称を「認知症対応型共同生活介護」と言います。認知症の診断を受けており、要支援2以上の人が対象の施設となります。仮に要介護4や5の方で介護が必要だったとしても、認知症の診断を受けていなければ入居することができません。

 

また、グループホームには9人を1ユニット(小グループ)とし、ひとまとまりにして支援するという特徴もあります。共同住宅で家事を分担しながら、職員の支援を受けて一緒に暮らす形態です。落ち着いた環境の下で、専門的な認知症ケアを受けることができるため、認知症になり他の施設から退居を余儀なくされた方でも入居できる可能性があります。

 

さらに、グループホームの入所には住所要件も定められています。グループホームが所在している市町村に住民票がある方のみ入所が可能となっています。住み慣れた地域にある施設で、地域住民に見守られながら過ごすことができるという点も特徴です。

 

このように、グループホームは認知症の人が地域で安心して暮らすための施設となっています。認知症専門で小規模な施設であるという点が、他の老人ホームと大きく異なる点です。

 

有料老人ホームの特徴

有料老人ホームとは、民間が運営する高齢者住宅です。バリアフリーであること、13㎡以上の個室であることなどの条件を満たすことが条件となっています。グループホームは介護保険法に位置付けられている介護保険事業所のひとつですが、有料老人ホーム自体は介護保険事業所ではありません。

 

施設ごとに提供しているサービスは異なりますが、65歳以上の方であれば要介護認定の有無を問わず入居することができ、施設によっては要介護5や看取り状態になっても、退居を求められない所もあります。機能訓練やレクリエーション、様々なアクティビティーを提供しながら、幅広い方が入居対象となっている点が有料老人ホームの特徴です。

 

なお、有料老人ホームには以下の3種類があり、こちらもそれぞれ特徴や対象者が異なります。実際に入居を検討する際は、ご自身の状態や希望に応じた施設を選んで申し込むことになります。

 

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームとは、介護保険事業所としての指定を受けた有料老人ホームのことを言います。介護職員が在籍して身体介護を提供することができるため、介護度が高い重度の方の有力な選択肢になります。

手厚い身体介護と、様々な生活支援サービスの両方を受けることができます。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、自立度の高い方から要介護の方まで幅広く入居が可能です。ただし、介護職員の配置義務がありません。介護が必要な方が入居した場合は、別のケアマネジャーや介護保険サービス事業所と契約し、老人ホームに入居しながら他事業所のサービスを利用するという形になります。

 

なお、介護は他のサービス事業所と契約して支援を受けるという仕組みのため、住宅型有料老人ホーム内や同一敷地内などにケアマネジャー・ホームヘルパー・デイサービスなどの事業所を併設している施設が多くなっています。有料老人ホームに併設された介護保険サービスと契約してもいいですし、入居者が独自に希望する事業所と契約することも可能です。

健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームの特徴は、介護を必要としていない方を対象にしているという点です。日常生活は自立しているが、食事作りや家事をするのに負担を感じているという方や、独り暮らしをするのには何となく不安があるという方に向いた施設です。

 

健康型は元気な人たちが集まる施設なので、アクティビティーやサークルなどのサービス、娯楽施設などが充実しています。生活に余裕があって新たな生きがいを見つけたいと考えるアクティブシニアが好んで利用しています。

 

ただし介護が必要になった場合は、対応する仕組みがなく退居が必要になることが多いため、注意が必要です。

 

グループホームと有料老人ホーム比較

グループホームと有料老人ホームには、様々な違いがあります。

ここでは、入居や退居に関する条件の違いと、それぞれの施設の雰囲気の違いについてご紹介します。

 

入居条件・退居条件

グループホームと、3種類の有料老人ホームの入居・退居に関する条件の例は以下の通りです。

 

入居条件 退去条件
グループホーム
  • 要支援2以上
  • 認知症の診断があること
  • 住民票のある市町村であること
  • 施設で対応できない医療行為が継続的に必要になった場合
  • 自傷行為や他者に危害を加える状態になった場合
  • 入院が長期化した場合
有料老人ホーム 介護付き
  • 65歳以上
  • 要支援1以上
  • 認知症の有無は問わない
  • 施設で対応できない高度な医療行為が継続的に必要になった場合
  • 認知症が重度となって他入居者に悪影響を与える状態となった場合
  • 入院が長期化した場合
住宅型
  • 60~65歳以上
  • 介護認定の有無は施設により異なる
  • 認知症の有無はは施設により異なる
  • 痰吸引や経管栄養などの高度な医療処置が継続的に必要になった場合
  • 認知症が重度となって他入居者に悪影響を与える状態となった場合
  • 入院が長期化した場合
健康型
  • 概ね60歳以上
  • 介護認定を受けていない者
  • 認知症の診断を受けていない者
  • 介護が必要になった場合
  • 認知症の診断を受けた場合
  • 入院が長期化した場合

※外部サービス利用で生活が維持できる状態であれば、すぐに退居を求められない場合もある

※全事業所共通の退去条件:利用料の支払いが滞った場合

 

このように、健康型有料老人ホームは元気な人が対象ですが、その他の施設については概ね同じような入居要件になっています。また、どの事業所も入院の長期化や医療ケアが必要になると、退居を求められる場合が多くなっています。認知症に関する退居要件については、グループホームはもともと認知症専門施設なので、ある程度の状態には対応可能です。しかし、自身や他者に危害を加える状態になった場合は、退居を求められる可能性があるため注意が必要です。

 

雰囲気

グループホームと、3種類の有料老人ホームの雰囲気の違いは以下の通りです。

 

雰囲気
グループホーム
  • 共同生活ならではのアットホームな雰囲気
  • 認知症専門の施設なので、職員の認知症対応も比較的スムーズで穏やかな雰囲気が流れている
  • 地域行事に参加したり、交流したりして地域に溶け込んでいる
有料老人ホーム 介護付き
  • 高級感がある
  • 介護が必要な人が多いので、賑やかではない
  • 特別養護老人ホームや介護老人保健施設に近い雰囲気
住宅型
  • 介護が必要な人はデイサービスなどを利用するため、日中は静か
  • 朝と夕方以降はデイサービスから入居者が帰ってくるので、賑やかになる
  • アットホームな施設から高級感がある施設まで様々である
  • 入居者同士の交流もある
健康型
  • 非常に高級感がある施設が多い
  • アクティブシニアが多く、入居者同士の交流が多い
  • アクティビティや各種イベント、サークルなど様々な活動があるため、終始賑やかである

 

グループホームはどの施設も穏やかな雰囲気で、和気あいあいと過ごしています。対して各有料老人ホームは、施設ごとのコンセプトに応じて多種多様な雰囲気になっています。

介護・生活サービスの違い

グループホームと各3種類の有料老人ホームにて実施可能な介護・生活サービスの違いは以下の通りです。

 

身体介護 認知症 掃除洗濯 食事 安否確認 生活相談 医療ケア 看取り
グループホーム
有料老人ホーム 介護付き
住宅型
健康型 × × × ×

※〇→対応可 △→外部サービスを利用若しくは施設により対応が異なる ×→対応不可

 

グループホームは、医療ケアと看取りに関しては施設によって対応が異なりますが、それ以外の支援には概ね対応しています。対する有料老人ホームは、介護付きが最も対応範囲が広く、健康型が最も対応不可のサービスが多くなっています。

 

どの施設にも特徴があり、特に住宅型有料老人ホームの場合は施設によって大きく対応が異なります。入居を検討する際は、必ず対応状況を詳しく確認するようにしてください。

 

施設選びのポイント

入居する施設を探す際は、まずは介護がどのくらい必要なのか、認知症の症状にはどのようなものがあるのかをしっかり把握したうえで、対応可能な施設から選択するようにします。グループホームや有料老人ホームは施設ごとに特徴があり、同じ種類の施設でも細かな対応内容に違いがあります。そのため、その施設の特徴をしっかり理解したうえで自身にあった施設を探すことが非常に重要です。

 

例えばグループホームの場合は認知症にしっかり対応し、特別な医療ケアが必要でなければ看取りまで対応可能な場合が多いです。しかし、入所の時点であまりに要介護度が高く寝たきりのような状態であれば、共同生活は困難と判断され入居を断られる場合があります。

また、住宅型有料老人ホームについても、ホーム職員で対応可能なサービスと外部サービスに頼る部分が混在しているため、必要なサービスを際限なく利用した場合は思いがけず高額な請求が発生することになります。「これなら介護が手厚い介護付き有料老人ホームにすればよかった」と後悔するような事態も起きるかもしれません。

 

施設を選ぶ際は、必ず施設の資料を取り寄せたり見学したりし、時には体験入居もしてよく検討することが非常に重要となります。安易に即入居可能な施設を選ばないように注意しましょう。

 

まとめ

ここまで、グループホームと有料老人ホームの違いについて以下のとおりご紹介しました。

 

  • グループホームは認知症の人が入居して共同生活をする小規模な施設で、要支援2以上の人が対象
  • グループホームはアットホームで穏やかな雰囲気。看取りも可能だが専門的な医療ケアが必要になると退居を迫られることもある
  • 有料老人ホームは自立した人からきめ細かい介護が必要な人まで、幅広く対応する
  • 有料老人ホームは「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類あり、入居や退居に関する要件・雰囲気が施設ごとに異なる
  • グループホームは入居後に介護が必要になっても問題ないが、有料老人ホームの場合は退居を求められる可能性もある
  • 入居する施設を決める際は資料請求や見学、体験入居をしてよく検討する

 

これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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