「食事を楽しむ」事は、高齢になり介護が必要になった時でも妥協したくない重要なポイントとなるでしょう。
老人ホームでの生活の質を高めるためにも、入所する前に確認しておきたい食事に関するポイントをご紹介していきます。
ぜひ、最後までご覧ください。
老人ホーム選びに食事は欠かせない
老人ホームを選ぶ際は、費用・介護サービスの内容・安全対策などに加えて「食事の質」についてもしっかり確認しておきましょう。。なぜかと言うと、入所した後は施設側が提供している食事を摂ることになるためです。
自宅で暮らしていると、好きな時に好きなものを食べられる生活を送る事もできますが、老人ホームに入所となるとそうも自由にはいきません。
老人ホームでの食事は薄味であったり、代り映えのしないメニューを提供されたりする場合が非常に多いです。調理の効率性、健康面の意識によりメリハリのない味付けになってしまったり、手間がかかることから、献立のレパートリーも多くつくれない事が原因になっています。
「食べること」の楽しみが失われてしまうと、生活意欲の低下にも繋がります。生活意欲が低下すると部屋に閉じこもる時間が増え、心身機能の低下に繋がり認知症が悪化する恐れもあります。「食事の時間」の善し悪しは、生活の質に直結するため、老人ホームを選ぶ際は、食事に関しても必ず確認するようにしましょう。
献立が充実しているか確認する
老人ホームの食事をチェックする際にまず重視すべきは、献立です。
献立は、以下のポイントを意識して確認しましょう。
- 自施設給食か、外注給食か
- 季節感のあるメニューになっているか
- 選択式やリクエストメニューの日、行事食があるか
- 2ヶ月の間で何度も同じメニューが出てきていないか
- どんな料理か分かりやすい表記になっているか
- 入居者の年齢層や好みの傾向に配慮したメニューになっているか
- 入居者の状態にあった食形態に対応しているか
この7つのポイントを確認する必要性についてご紹介します。
自施設給食か、外注給食か
介護施設から提供される食事は、施設内の設備で調理する「自施設給食」と、外部の業者に委託する「外注給食」の2パターンがあります。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
自施設給食 |
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外注給食 |
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どちらの形態にも善し悪しがあるため、入居希望者本人と家族が話し合った上で選択することをお勧めします。
季節感のあるメニューになっているか
家庭の食卓では、その時期に応じた旬の食材で調理をすることもあるでしょう。旬の食材を使うことで、季節の移り変わりを感じることができ、食事自体が楽しみになる方もいると思います。
また、「食」そのものが刺激となって会話のきっかけや交流の機会になります。
選択式やリクエストメニュー、行事食の日などがあるか
日本の文化には、「ハレとケ」という言葉があります。「ハレ」とはお祝い事や年中行事などの非日常、「ケ」とは日常のことを指します。日常と非日常の両方があるからこそ、生活にメリハリがうまれるのです。
食事に関しても同様で、毎日同じような代り映えのしない食事を摂っていると飽きるだけでなく、不満も生まれかねません。月に1〜2回、特別メニューの日があると、入居者も食事に対する楽しみが増え、きっと喜んでくれるでしょう。
2ヶ月間の間で何度も同じメニューが出てきていないか
同じ料理ばかりではなく、色々な料理を楽しみたいものですよね。施設の見学に行った際は、実際に献立表を見せてもらいましょう。1ヶ月分だけだとメニューのバリエーションがつかみにくいため、少なくとも2ヶ月分の献立表を見せてもらうことがお勧めです。
2ヶ月という短い期間の中で、何度も同じ献立が出てくるようであれば、食事の楽しみへの期待はできないかもしれません。どんな料理か分かりやすい表記になっているか
料理名を見たとき、どんな料理なのか想像がつきやすいと食欲にも直結します。高齢の方に異国の料理のようなカタカナだらけのメニューを示しても、「食べる事が楽しみ」「美味しそう」とは思われにくいでしょう。
例えば「月見うどん」や「ほうれん草の胡麻和え」などの日本語メニューであれば、使用している食材や調理方法などがイメージできます。しかし、「オルトラーナ」「乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)」などと献立に書いてあった場合、楽しめないだけでなく、料理に対し不信感を持ってしまうかもしれません。
入居者が献立を見た際に、どんな料理が出てくるのかイメージできるよう、入居者目線で献立を作成できている施設だと安心です。
利用者の年齢層や好みの傾向に配慮したメニューになっているか
加齢により弱まっている胃腸や嚙む力・飲み込む力に適したメニューになっているかを確認しましょう。
また、高齢者の場合、洋食よりも和食の方が喜ばれる事が多いです。
施設の献立が、入居を検討している方の好みや、今までの食生活に合ったメニューになっているか、忘れずに確認をしましょう。
入居者の状態にあった食形態に対応しているか
普通の食事を摂ることが難しくなっても、代替食や様々な食形態への変更、療養食への対応が可能かどうかも確認しましょう。入居時は元気で一般の食事を摂ることができていたとしても、その後の疾病や食事に関する機能の低下により、ソフト食やミキサー食、糖尿病や透析患者に対応した療養食などの必要性が出てくる場合があるためです。
例えば、追加料金によって対応できる場合や、自施設で作らず外注のために対応が難しいケースが考えられます。
様々な状態の入居者に応じて食事提供ができていない場合、退居を強いられたり、思わぬ高額請求を受ける可能性も考えられます。そのため、食形態変更への対応や各種療養食への対応状況は必ず確認しましょう。
有料老人ホームと特別養護老人ホームでは食事も変わる
同じ老人ホームでも、有料老人ホームと特別養護老人ホームでは食事内容に違いがあります。
公的な施設である特別養護老人ホームは、国が食事の基準額を決めているため、ある程度予算に限りがあります。その一方で、有料老人ホームは民間の施設であり、食事にかける費用は施設側が自由に設定できます。
有料老人ホームでは、高級志向のメニューから家庭的なものまでバリエーションが豊富である事が多く、中には一流の料理人が腕をふるっていることを大々的に謳っている施設もあります。対する特別養護老人ホームの場合は、地産地消の食材や一人一人の状態に応じたきめ細かい対応が特徴で、限られた予算の中で工夫されたシンプルな食事が多い傾向にあります。
費用は高くても「食」を大切にしたいと考えるのであれば有料老人ホーム、費用面と介護度に応じた対応を重視するのであれば、特別養護老人ホームを希望に応じて選択するのがいいでしょう。
老人ホームには試食に行こう
老人ホームの食事を確認するためには、可能な限り試食をさせてもらいましょう。特に、昼食の時間の見学は、施設の雰囲気がわかりやすいため多くの専門家が推奨しています。実際の料理を見て、食べて、感じることで施設の食事が入居者に合っているか確認することができるためです。また、食事の内容だけでなく、食事を提供する職員の動きも確認しておきましょう。
例えば、車いすから普通の椅子に移乗させてから食べさせているか、食事を無理矢理口の中に押し込むような介助をしていないか等を確認しましょう。雑な介護をする施設の場合は、無言で介助していたり、ご飯とおかずをぐちゃぐちゃに混ぜて食べさせたりしています。
味だけでなく衛生管理体制にも確認しよう
老人ホームの食事を確認する際、食中毒や食事を介した感染症のまん延を防ぐためにも、適切な衛生管理が行われているかどうかも着目してください。
具体的には、以下のポイントを満たしているか見学時にチェックしましょう。
- 普段排泄介助や入浴介助に入っている介護職員は、食事介助の前に手洗いや着替えやエプロン着用等を行って雑菌が広がるのを防いでいるか
- 厨房や配膳の職員は髪の毛などの混入を防ぐための帽子をかぶっているか
- 食堂の清掃状況は万全か
- 食堂は廊下やエントランスなど不特定多数の人が通る場所から仕切られているか
- 入居者への差し入れに関するルールが掲示されているか
実は、面会者からの差し入れにも食中毒や誤嚥の危険性があります。そのため、基本的な衛生管理はもちろん、差し入れに関するルールが掲示されていると食事に関する衛生管理や安全管理について意識できているかの一つの指標となります。
まとめ
ここまで、老人ホーム選びに重要な食事に関するチェックポイントについてご紹介してきました。
- 食事を重視した老人ホーム選びの際は、「自施設給食か外注か」「献立の充実度」「季節感や入居者ニーズを具現化しているか」「入居者の目線で個別対応ができているか」等の点を確認する
- 老人ホームの食事は、昼食の時間に見学と試食を行うことで評価しやすい
- 食事の味や介護の質はもちろんの事、衛生管理が行き届いているかどうかも確認する
これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。