「老人ホームに入るには、条件はあるの?」
「老人ホームを選ぶ際のポイントが知りたい」
老人ホームとひとくちに言っても、老人ホームにはさまざまな種類があります。
選択を誤ると、入居費用が高くなってしまったり、必要なサービスを受けられなかったり、また場合によっては住み替えが必要になることもあります。
こちらの記事では、老後を安心して過ごすために、老人ホームを選ぶ際の知っておきたい重要なポイントを徹底解説していきます。
老人ホームに入居するには介護度を確認する必要がある
老人ホームを選ぶ際の重要な入居条件は「介護度」です。そのため、老人ホーム入居前に介護度を確認する必要があります。
介護度とは、健康状態や身体能力、認知能力などによって介護が必要な度合いを非該当、要支援1または要支援2、要介護1〜5と8段階で表します。
介護度によって、受けることができる介護保険のサービスが変わるため、介護度を決定する「認定調査」の重要ポイントをしっかりとおさえておきましょう。
1.要介護認定の申請
要介護認定の申請は、市町村窓口または地域包括支援センターで受け付けています。
この申請は、本人または以下の「代理人」のみ可能です。
- 親族
- 地域包括支援センターの職員
- 居宅介護支援事業者
- 介護保険施設の職員
申請から要介護認定が下りるまでの日数は30日以内です。
申請から要介護認定までの流れ、介護度別の使える介護サービスは下表を参考にしてください。
出典:厚生労働省 要介護認定の仕組みと手順
2.認定調査とは
認定調査は、市町村の職員による訪問調査が基本となり、所要時間は約1時間程度、認定の結果は申請から30日以内に連絡があります。
要介護の目安については下表の通りです。
出典:厚生労働省 要介護認定の仕組みと手順
認定調査では、本人にベッドから立ち上がるまでの動作をしてもらうなど、実際の動作確認も行われます。
また、当日は家族(介護者)へ普段の様子についての聞き取り調査も行うため、代弁者として普段の様子を把握しておくことも大切です。
ここで気をつけておきたいポイントは、本人がいつも以上に頑張ってしまい、実際の介護度と異なった結果となってしまわないようにすることです。
いつもなら何かにつかまったり、介助してもらって立ち上がっているところを、調査員の前では支えなしで立ち上がってみせてしまう等はよくある話です。
しかし、ご本人の前でできないことを調査員に伝えてしまうと、プライドを傷つけたり怒らせたりしてしまう可能性があるため、普段の様子を紙に箇条書きでまとめ、調査員に渡すようにするといいでしょう。
認定の結果に納得がいかない場合は、認定結果通知を受け取った日の翌日から90日以内に都道府県に設けられた介護保険審査会に認定結果の取り消しを求めることができます。
ただし、再調査によって認定が希望通りになる保証はないため、正しい判断をしてもらうためにも対策をしておきましょう。
3.認定調査の調査内容
以下は「認定調査票記入の手引き」(令和3年8月)を引用、また参考にしたものです。
【概況調査】
- 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
- 置かれている環境等(調査対象者の家族状況、住宅環境等)
【基本調査】
※ 全74項目の要介護認定調査項目において、
・ 介助の項目(16項目)で、「全介助」又は「一部介助」等の選択肢80
・ 能力の項目(18項目)で、「できない」又は「つかまれば可」等の選択肢
・ 有無の項目(40項目)で、「ある」(麻痺、拘縮など)等の選択肢
を選択している割合が80%以上になる
身体機能・起居動作 | 麻痺等の有無
拘縮の有無 寝返り 起き上がり 座位保持 両足での立位 歩行 立ち上がり 片足での立位 洗身 つめ切り 視力 聴力 |
生活機能 | 移乗
移動 えん下 食事摂取 排尿 排便 口腔清潔 洗顔 整髪 上衣の着脱 ズボン等の着脱 外出頻度 |
認知機能 | 意思の伝達
毎日の日課を理解 生年月日を言う 短期記憶 自分の名前を言う 今の季節を理解 場所の理解 徘徊 外出して戻れない |
精神・行動障害 | 被害的
作話 感情が不安定 昼夜逆転 同じ話をする 大声を出す 介護に抵抗 落ち着きなし 一人で出たがる 収集癖 物や衣類を壊す ひどい物忘れ 独り言・独り笑い 自分勝手に行動する 話がまとまらない |
社会生活への適応 | 薬の内服
金銭の管理 日常の意思決定 集団への不適応 買い物 簡単な調理 |
特別な医療 | |
日常生活自立度 |
【特記事項】
特記事項は、「基本調査(選択根拠)の確認」と介護の手間という二つの視点から活用されるが、それぞれの目的を果たすため、「選択根拠」「手間」「頻度」の三点に留意しつつ、特記事項を記載する。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができる。
この内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになります。
老人ホームに入居する年齢は?
老人ホームに入居できる年齢は、施設の種類によって異なりますが、60歳または65歳になります。
これは、介護保険のサービスを受けることができる年齢が65歳以上となるためです。
介護度によって使えるサービスや金額がかわるため、施設を選ぶ際は今の介護度だけではなく、看取りの有無や医療依存度についても考えておくことが重要です。
入居後に住み替えの必要に迫られることがないように、将来設計をしておきましょう。
また、老人ホームには、「介護はまだ必要ないが、一人暮らしをするのは不安がある」という場合でも入居できる施設があります。
食事の提供や夜間も職員が常駐し、安否確認や生活相談を受けることができるうえ、自由度も高く、事前に連絡しておけば外出や外泊も可能といった以下の施設です。
60歳から入居可能で、介護が必要になった場合は訪問介護事業所と外部契約をすることで介護を受けることができます。
訪問介護事業所を隣設している施設も多いため、将来介護に困ることはありませんが、介護付きの施設に比べて割高になる場合があります。
- サービス付き高齢者向け住宅
- 住宅型有料老人ホーム
以下の施設は、介護付きの施設であるため、入居条件は65歳以上となります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
例外として、介護保険法施行令第2条で定めている下記の「特定疾病」があり、この疾病を原因とする介護が必要と認定された場合、40歳から介護保険が使えます。
ただし、全ての施設が受け入れているわけではないため、受け入れ可能か相談してみましょう。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※
- 関節リウマチ※
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
- 【パーキンソン病関連疾患】
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症※
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)
出典:厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省
医療依存度は入居する際に重要になる
すべての施設に医療体制が整っているわけではないため、医療依存度は老人ホームを探す際に重要なポイントとなります。
夜間は看護師がいない施設もあるため、医療依存度が高く24時間のケアを必要とする場合、看護師の配置基準を調べておきましょう。
医療依存度が高い方であれば、介護療養型医療施設や介護医療院の検討をおすすめします。
入居する際に保証人・身元引受人は必要
老人ホームに入居する際、ほとんどの施設で「保証人」や「身元引受人」が必要です。
支払いができなくなった場合の保証のほかにも、病気や事故による入院時のサインや治療方針の承諾も求められます。
また、亡くなった場合の身元引受も施設の職員では行なえません。
家族が保証人になることが一般的ですが、近年では身寄りのない高齢者も増えているため、身元保証会社によるサービスもあります。
保証人を頼める人が見つからず困った時は、こちらの記事を参考にしてください。
老人ホーム入居時は保証人が必要?頼めない場合の対処法も合わせて解説
収入がないと入居はできない?
収入がなく、生活保護を受けている場合でも入居できる老人ホームはあります。
選択肢は多くありませんが、諦めずに相談してみましょう。
その場合の第一選択肢は公的施設である「特別養護老人ホーム」です。
さまざまな制度を活用したり、多床室といわれる大部屋に入居できれば費用をおさえることができます。
まずは、お住まいの市区町村にある福祉事務所で生活保護受給の担当をしているケースワーカーに相談し、老人ホームへの入居意思を伝えましょう。
こちらの記事で、生活保護受給者の方が入居可能な施設探しの方法を詳しく解説しています。
入居する本人の意思がないと入れない
「老人ホームになんて入りたくない」
「私はまだ自分で生活できている」
このように、老人ホームを拒否される方は少なくありません。
しかし、火の不始末や転倒の心配により、家族が老人ホームへの入居をすすめることもあるでしょう。
ただし、施設によっては、入居する本人の意思がないと入れない場合があります。
必ずご本人の同意を得ることができるとは限らないため、ご本人が拒否している場合は施設の入居相談員に相談してみましょう。
入所を考えている老人ホームには、できればご本人と一緒に見学に行き、体験入所をするなどして、スタッフの様子や施設の雰囲気を確認しておくと良いでしょう。
その際、比較検討するために、少なくても3件は見学に行くことをおすすめします。
対応に困った時は、市区町村やケアマネージャーに相談してみましょう。
こちらの記事では、老人ホームを嫌がる理由や対処法について解説しています。
https://vitaplus.jp/?p=547&preview=true
まとめ
老人ホームの入居条件と老人ホームを選ぶ際の重要なポイントについて解説しました。
- 老人ホーム入居前に介護度を確認する必要がある
- 老人ホームに入居できる年齢は、施設の種類によって60歳または65歳である
- すべての施設に医療体制が整っているわけではないため、医療依存度が高く24時間のケアを必要とする場合、看護師の配置基準を調べておく
- 入居の際、ほとんどの施設で「保証人」や「身元引受人」が必要となる
- 収入がなく、生活保護を受けている場合でも入居できる老人ホームはある
- できればご本人と一緒に見学に行き、体験入所をするなどして、スタッフの様子や施設の雰囲気を確認しておくことが大切である
現状だけを見て判断せずに、将来設計をしっかりと行い、必要なサービスが何かを考慮して老人ホームを探しましょう。