老人ホームへ年金で入居できる?その方法と注意点

親のひとり暮らしは、もう限界。
時間もお金もないのにどうしたらいいの。
年金だけで老人ホームに入るのって無理かなあ。

親の介護は突然やってきます。

「まだ子供たちの教育費にお金がかかるから、もう少し待って」

なんて言っても待ってはくれません。

ひとりで悩んで介護離職をしたり、むだに高い費用を払ってしまったり。

あとで悔やむことがないように、いざという時に損をしないための老人ホームの選び方や、出費をおさえる方法について解説します。

老人ホームの費用を年金でまかなえるのか

親に介護が必要になったとき、一番の心配ごとは「お金」の問題ですよね。

選択肢はあまりありませんが、老人ホームの費用を年金だけでまかなうことは可能です。

ひとりで悩んで後悔することがないように、あなたに合った解決法を見つけましょう。

「老人ホームに入れるお金がないから、仕事を辞めて私が介護するしかない!」

覚悟をして辞めたものの、介護離職をして後悔する人は少なくありません。

終わりの見えない介護は想像以上に大変です。

 

老人ホームには「入居一時金」が必要な「民間施設」があります。

一般的に数十万円から数百万程度かかりますが、1000万円以上かかる「高級老人ホーム」と呼ばれる高級施設もあるのです。

そのため、高額な老人ホームの入居一時金を払うために、実家を売る人も少なくないようです。

子どもたちに迷惑をかけまいと、自分から家を手放す親もいるでしょう。

しかし、年金だけで月々の費用を払っていける施設があるとしたら?

条件が揃えば年金だけでまかなうことは可能です。

但し、年金受給額は、だれもが同じ金額をもらえるわけではありません。

つまり、もらえる受給額によって、老人ホームの選択肢も変わってくるのです。

 

「公的施設」といわれる下記の施設は、入居一時金が不要で、月額利用料も安価な設定となっています。

  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • 老健(介護老人保健施設)
  • 介護医療院(介護療養型病床)

次に、年金だけでまかなえる施設を探す方法を解説していきます。

年金受給額をまずは確認

年金には「老齢基礎(厚生)年金」「障害基礎(厚生)年金」「遺族基礎(厚生)年金」があります。

  • 老齢基礎(厚生)年金・・・高齢になったときの生活保障
  • 障害基礎(厚生)年金・・・病気やケガで障害状態となったときの保障
  • 遺族基礎(厚生)年金・・・残された遺族の生活保障


公的年金は「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2階建て方式になっており、働き方や暮らし方で納める年金は変わってきます。

納めた年数によっても、もらえる年金額は変わってくるので、まずはいくらもらえるのかを確認しましょう。


毎年誕生月に日本年金機構から「ねんきん定期便」が送られますが、こちらで将来受け取れる年金見込み額を確認することができます。

既にもらっている方は、2カ月に1回銀行口座に振り込まれる金額を確認しましょう。

年金を受け取る年齢と受給額

65歳での受給を選択した場合、
自営業や専業主婦の方は満額納付で月に6.5万円
会社員の方は満額納付で月に14.8万円(平成30年度平均)がもらえます

また、老齢基礎(厚生)年金は、65歳で受け取らずに、66歳以降75歳までの間で繰り下げることで、増額した年金を受け取ることができます。

繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。

なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることができます。

出典:厚生労働省 年金の繰下げ受給

国民年金の場合は特別養護老人ホームが第一選択肢に

老人ホームには、地方公共団体や社会福祉法人が運営する「公的施設」と、民間企業が運営する「民間施設」があります。

収入が国民年金のみで、資産や預貯金などもない場合は公的施設の「特別養護老人ホーム」が第一選択肢になります。


居住費と食費の負担軽減をしてくれる「介護保険負担限度額認定証」を交付してもらうことで月額5万円代で入居することも可能です。

但し、入居条件として65歳以上で原則要介護度3以上が必要になります。


また、収入が国民年金のみの場合は、居住費をおさえる必要があるため「多床室」といわれる大部屋を選びましょう。

この居住費は、私たちが賃貸住宅で払う家賃のようなものなので、中心街よりも郊外を選ぶことで、さらに安くおさえることができます。

しかし、安価な施設は人気が高いため、即入居が難しいことも多いです。

出典:厚生労働省 介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)

少しハードルが高いかもしれませんが、県外も視野に入れることも選択してみましょう。

都会よりも田舎の方が安価ですし、入居までの待機日数が短いというメリットもあります。

厚生労働省がとりまとめている「介護サービス情報公表システム」を活用すれば、インターネットで全国の介護事業所を検索することができます。

複数の施設に申し込むこともできるので、気に入った施設があれば申し込んでおきましょう。

選択肢が豊富なのは有料老人ホーム

民間施設である有料老人ホームは、費用面だけをみると敬遠してしまいます。

なぜなら、入居一時金が1億円という高級施設から、一般的でも0円から数千万円が必要だからです。

月額費用でいうと、だいたい15万円から40万円になります。

居室は個室が一般的で、特別養護老人ホームと比べて待機者が少ないというメリットがあります。

有料老人ホームは入居者の介護度に応じて「介護付き」「住宅型」「健康型」の3タイプから選ぶことができます。

「要支援1」や「要介護1」から入居が可能な施設もあり、特別養護老人ホームと比べて元気な人が多いことから、有料のオプションサービスが充実しています。

例えば、ヨガや太極拳などの趣味活動やドッグセラピー、買い物などです。

独自の特色を打ち出す施設もあり多種多様なため、見学に行くなどして、自分に合う施設を見つけましょう。

年金だけでは入居できない場合に利用できる制度

年金だけではまかなえない場合は「介護保険負担限度額認定証」を市区町村の窓口で申請してみましょう。

居住費と食費の負担軽減をしてくれる「介護保険負担限度額認定証」を交付してもらうには以下の4つの条件が必要となります。

  • 生活保護世帯   (第1段階)
  • 年金収入80万円以下(第2段階)
  • 住民税非課税世帯 年金収入が80万円~120万円以下(第3段階①)
  • 住民税非課税世帯 年金収入が120万円以上    (第3段階②)

加えて、配偶者が住民税非課税(別世帯でも)であること。

さらに、預貯金預貯金、有価証券、金・銀、投資信託、現金)についても条件があります。

第2段階・・・預貯金額が単身で650万円まで、夫婦で1650万円まで
第3段階①・・単身で550万円まで、夫婦で1550万円まで
第3段階②・・単身で500万円まで、夫婦で1500万円まで
※第4段階は課税世帯です。

下の統計を見ると第1段階から第3段階までの所得層が特別養護老人ホームの約7割を占めています。

また、所得段階別の割合からも要介護1~5それぞれの割合にほとんど差がないことから、特別養護老人ホームは低所得者であっても入居しやすいと言えるでしょう。

しかし、人気があるために即入居が難しい場合もあります。

 

出典:厚生労働省 介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)

もうひとつ、特別養護老人ホームの介護費・居住費・食費の全てについて、半額分が医療費控除の対象となるため、申請することで還付してもらえます。

領収書が残っていれば、過去5年までさかのぼって還付請求することもできますよ。

費用の関係で難しい場合は訪問介護も視野に

これまで紹介した制度を利用しても費用の捻出が難しい場合は、在宅での介護「訪問介護」も視野に入れましょう。

まだ介護認定をしてもらっていないのであれば、まずは市区町村の介護保険課等の窓口を訪ね、管轄の地域包括支援センターを紹介してもらってください。

そこで、自分のニーズにあった居宅介護支援事業所を選んでもらい、ケアマネージャーと面談後に「ケアプラン」を立ててもらいます。

在宅介護サービスの種類

介護保険で受けることができる在宅介護サービスは、以下の6つになります。

  1. 訪問型の介護サービス(訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリ、訪問診療など)
  2. 通所型の介護サービス(デイサービス、デイケアなど)
  3. 宿泊型の介護サービス(ショートステイなど)
  4. 訪問・通所・宿泊の融合型介護サービス
  5. 住宅環境を整えるサービス(福祉用具のレンタル、住宅リフォームなど)
  6. 介護保険適用外のサービス(実費対応による訪問介護やボランティア)

しかし、介護度によって使えるサービスに限りがあるため、ケアプランをつくるケアマネージャーとの話し合いは重要です。

  • ヘルパーに入ってもらいたい曜日と時間帯、必要な支援内容を決める。
  • 訪問看護師や訪問リハビリは必要なのか。
  • 訪問入浴では、寝たきりの状態でも看護師による入浴前の健康チェックと、持ち込みの専用の浴槽で入浴介助をしてくれるが、その際に家族の立ち会いを求められる場合もある。
  • 訪問診療や訪問歯科による口腔内のケアなどは必要なのか。
  • 電動ベッドや車椅子、手すりなどの福祉用具のレンタルなどは必要なのか。

このように、在宅支援でできることは多いです。


とはいえ、利用者にとって住みなれた家で介護をうけることはメリットですが、家族にとっては少なからず協力が必要になります。

そのため、デイサービスやショートステイをうまく使うことで、介護者の休息時間をつくり負担軽減を図ることが重要です。

高額介護サービス費制度

また、高額介護サービス費という制度もあります。

介護サービスを利用した際、自己負担割合に応じた利用料を負担します。

高額介護サービス費とは、1カ月に払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた時に超えた分が払い戻される制度です。

しかし、介護度に応じた区分支給限度額を超えた場合は支払い対象にはなりません。

出典:厚生労働省 区分支給限度基準額について

つまり、必要なサービスは何なのか選択することが重要です。

区分支給限度額を超えると全額自己負担になるため、ケアプラン作成時にオーバーしないように気をつけましょう。


在宅で介護を受けた場合、下図の所得区分に応じた負担上限額が1カ月に必要な介護費となります。

出典:厚生労働省 令和3年8月利用分から 高額介護サービス費の 負担限度額が見直され

この高額介護サービス費は、負担上限額を超えた時に市区町村から申請書が送られてきます。

それを送られてきた市区町村の窓口に提出し受理されると、高額介護サービス費を受けることができます。

申請の時効は2年以内です。自己申告制なので、申請もれがないように気をつけましょう。

まとめ

介護サービスには、お得な制度があることが、おわかりいただけたでしょうか?

  • 「介護保険負担限度額認定証」は、特別養護老人ホームの居住費と食費の負担軽減
  • 「医療費控除の還付」は、特別養護老人ホームの介護費+居住費+食費の半額が医療費控除の対象
  • 「高額介護サービス費」は、在宅介護の限度額を超えた介護費用の還付


現代は子どもの数が減り、家族で介護をすることが難しくなりました。

そのため、介護費用をまかなうことも、ひとりの肩にかかる負担が大きくなっています。

ひとりで悩んで、すべてを背負ってしまうことがないように、今ある制度や社会資源をフルに使いましょう。

 

 

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