老人ホームを嫌がるのはなぜか?対処法などを徹底解説

介護をする上で、心強い味方となる老人ホーム。

介護の度合いや、仕事と家庭の都合により、入居をさせることを検討する方も多いでしょう。

しかし、入居する本人が嫌がった場合、家族はどのように対応すればいいのでしょうか。

そのような状況になったときでも落ち着いて対応ができるように、老人ホームを嫌がる一般的に多い理由と対応法について紹介したいと思います。

老人ホームに入居を嫌がるのはなぜか?

老人ホームへの入居に前向きになれない人がいるのはなぜか。

入居を嫌がる理由について、以下が考えられます。

  • 認知症の進行により、見知らぬ場所や知らない人に囲まれるのが怖い
  • 住み慣れた自宅から離れ、生活の環境が変わってしまうのが不安
  • 家族と離れるのが嫌
  • 「老人ホーム」という場所にマイナスな印象がある

 

これらの理由について一つずつ解説していきます。

 

認知症の進行により見知らぬ場所や知らない人に囲まれるのが苦手

年齢に関わらず発症する可能性がある認知症。

脳の病気や怪我など様々な要因で認知機能が低下することにより、日常生活全般に支障をきたします。

認知症は理解力や記憶力の低下だけではなく、精神的に不安定になりやすく感情のコントロールも難しくなります。

そのため、環境の変化に対し恐怖を感じられる方も少なくありません。

(“「認知症に関する世論調査」の概要”)より引用

 

また、内閣府が令和元年に行った認知症に関する世論調査によると、認知症になっても慣れ親しんだ地域で生活したいと全体の41.8%の方が回答しています。

認知症になっても今の生活を変わらずに継続したいという要望を持ってる方が多く、今までと環境が変わる老人ホームには入居したくない、と思われるのではないでしょうか。

住み慣れた自宅から離れ、生活の環境が変わってしまうのが不安

長らく生活をしてきた場所は様々な思い入れもあり、離れたくないと感じる方が多いでしょう。

慣れた生活空間や家具、自宅の中だけではなく自宅周囲の環境など、全てにおいて長年住んだ場所は特別でしょう。

施設へ入居すると、気軽に外出できなくなる等、不自由な生活をおくることになるのではないかと不安に感じ、老人ホームへの入居を避けてしまう方もいます。

家族と離れるのがさみしい

家族と同居している場合、いつも一緒にいる人と別々に暮らすことになるため不安を感じるでしょう。

特に家族と良好な関係を築いている場合、老人ホーム入居前だけではなく、入居後に家族がそばに居ない生活に馴染めず、精神的に不安定になり帰宅願望が強くみられることがあります。

一緒に暮らしていた家族と離れることになるという状況は、私たちが考えるよりもずっと強く不安に感じるのです。

「老人ホーム」という場所にマイナスな印象がある


現在の老人ホームでは、入居者各々の趣向や性格などを考慮したサービスの提供を行っています。

しかし少し前までは、自宅での介護が当たり前であり、老人ホームへ入居させることに関しては否定的な考えを持つ方が多くいました。

マイナスな印象を老人ホームに持ったままでは、入居を避けたくなってしまうのは当然の事と言えるでしょう。

老人ホームに無理やり入居は逆効果?

老人ホームへの入居を嫌がる方を無理に入居させる事となった場合、以下のことが考えられます。

  • 家族関係の悪化と本人の生活意欲の低下

無理やり入居させられた場合、本人は家族から「見捨てられた」「裏切られた」といった感情を抱き、家族関係が悪化してしまう可能性があります。

本人の意思に反する無理な施設入居は本人の心を傷つけてしまいます。

また高齢者にとっても、生きがいや生活の張り合いは身体の健康と同じく、とても大切なことです。

無理な施設入居は、さまざまなことに対する意欲を失い、今後の生活に影響を与えることになるため、避ける必要があるでしょう。

 

  • 認知症の進行の恐れ

すでに認知症と診断されている場合、本人の意思に沿わない環境の変化は認知症の症状に大きな影響を与えることになります。

なぜなら認知症を患う方は、環境の変化に強い不安を感じるからです。

今まで出てこなかった認知症の症状が、住んでいた場所、生活スタイル、人間関係など多くの環境の変化により、現れることも珍しくありません。

老人ホームに入居したくないという思いを強く持ったまま入居することになってしまった場合、ストレスがかかることで、自宅にいる時よりも症状が悪化する可能性も考えられます。

納得して入居してもらえるために家族がすることは何か

老人ホームへの入居について、家族も入居する本人も納得できる形が一番です。

入居する本人に納得してもらうために、家族は何ができるのでしょうか。

考えられることを下記にあげてみました。

  • 認知症カフェなど施設や地域で開催している地域交流の場に行ってみる
  • 本人の気持ちにきちんと耳を傾ける
  • 入居を希望する老人ホームの住環境の確認

環境の変化というものは、誰にとっても人生に少なからず影響を与えるものです。

その点を踏まえて、家族としても親身になって考えていく必要があります。

 

認知症カフェなど施設や地域で開催している地域交流の場に行ってみる。

認知症カフェとは、認知症を患う当事者やその家族が、地域の人や専門家との交流を通して情報共有や互いの理解を深める場です。

2020年の調査では47都道府県1,518市町村にて、7,737カフェで実施。

商業目的のカフェではなく、交流目的のカフェのため認知症の当事者やその家族だけではなく、地域の方や子供から大人まで幅広い方々が気軽に参加できるようになっています。

運営元は様々で、介護施設などの社会福祉法人や市町村、NPO法人などが開催しています。

カフェによって内容はさまざまですが、アクティビティによる楽しい時間を提供していたり、悩む家族に対して介護相談を行っています。

日常的な介護のことから、老人ホームへの入居に対して家族はどのようにして向き合えばいいのかなど気軽に相談をすることができます。

本人の気持ちにきちんと耳を傾ける

本人が今後どのようにしていきたいのか、きちんと話に耳を傾ける必要があります。

耳を傾けることで、介護を必要とする本人が何を望んで、何を必要としているのか分かるため、老人ホームに対する否定的な感情を緩和することができるかもしれません。

家族と介護を必要とする本人が直接話し合える状況が望ましいですが、簡単ではない場合もあると思います。

家族間で話がまとまらない場合は、担当のケアマネージャーに間に入ってもらうことも検討するといいでしょう。

入居を希望する老人ホームの住環境の確認

高齢者や認知症を患う方にとって、環境の変化についていくのは簡単なことではありません。

納得して入居してもらうためにも、入居を希望する老人ホームの住環境を確認しておくことが重要です。

  • 慣れ親しんだ家具の持ち込みは可能かどうか
  • 届け出を出せば気軽に外出や外泊ができるか

上記のような点は、入居後も本人が家族と過ごしたい・自宅にある物に囲まれて生活したいといった希望に沿うことができるため、大切な要素になります。

本人の希望に沿った生活を提供することができれば、入居後も問題なく生活を送ることができるでしょう。

体験入居などをしてみる

施設によっては体験入居を行っているところもあります。

または体験入居ではなく、日常的な介護で宿泊サービスを利用して老人ホームでの生活に慣れてもらう方法もあります。

 

介護施設への宿泊サービスは、お泊りデイサービスとショートステイがあります。

それぞれの違いについて見てみましょう。

 

お泊りデイサービス

お泊りデイサービスとは、通所介護(デイサービス)を受けることができる事業所へ、そのまま宿泊を行うことができるサービスのことを指します。

日中のデイサービスは介護保険適用になりますが、宿泊については介護保険の適用になりません。

お泊りデイサービスを利用するメリットは、利用する本人にとって慣れた環境で宿泊体験をすることができるという点です。

家族の介護負担の軽減ももちろんありますが、自宅以外で過ごすということに慣れてもらえるという点でも、宿泊デイサービスは利用してみることをお勧めします。

ショートステイ

ショートステイとは短期入所生活介護と言い、短期的に施設へ入所し24時間体制で日常生活の介護や支援を受けることができるサービスです。

ショートステイを専門としている施設もありますが、長期的に入居できる介護施設でもショートステイ用の居室を用意しており、入居することが可能です。

いずれ老人ホームへの入居を考えている場合、一時的に入居を繰り返し行うことで施設生活がスムーズに始められることができます。

入居を検討している施設がある場合は、ショートステイを行っているか確認してみるといいでしょう。

対応している場合には、周期的に利用を行い本人や家族、老人ホームとの相性をショートステイの利用を通して様子を見ることも可能となります。

本人の気持ちが変わるまでは本人の気持ちを尊重しよう

自宅での介護が難しくなり、入居が嫌だという気持ちを尊重したくても、できない場合もあるでしょう。

そのような場合、利用する本人が混乱し、不安によって感情のコントロールがきかなくなるかもしれません。

しかし、老人ホームでの生活がスタートしたとしても家族との関わりは変わらずに続くことをきちんと伝えることができれば、納得した上で老人ホームでの生活をスタートしてくれるでしょう。

入居することに否定的である場合は、以下のことを説明し、きちんと伝えることをお勧めします。

  • 老人ホーム入居後もこまめに面会へ行けること
  • 老人ホーム入居後も、家族が要望を叶えてあげられること

家族の気持ちを伝え、入居する本人の意思も尊重しながら入居に少しでも前向きになってもらうことが大切になります。

まとめ

老人ホームへの入居は、入居する本人だけではなく、ご家族にとっても不安に思うことが沢山あると思います。

双方の不安をなくし、納得できる状況まで持っていくには、しっかりと話し合いをする事が大切です。

ケアマネージャーや、地域の相談窓口に一度話をしてみる事もおすすめします。

また、情報収集を行い、将来的なことを考えて様々な老人ホームの特徴について調べておくといいでしょう。

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